建具と換骨奪胎

passarella2009-04-07


 一年ぶりにK邸を訪れた、竣工した時から幾多の風雨を経て「渋い」が似合う様相で、”これで新築”と隣人に言わせしめたK邸。
土龍色(もぐら色)の塗り壁、客人を迎入れるアプローチは、褐色に塗られたスギ板の羽目板、
さらに玄関から内部に足を踏み入れると、黒光りした無双の引き戸が出迎え、その奥の三和土の通り土間では、茶褐色の千本とガラス入りの板戸が出迎える。


 一年ぶりのk邸は、時間の経過と共に、美しく豊かに人生を重ねるがごとく、味わい深く風情さえ感じさせる住まいになっていた。

 そんな風情は、主に古びた建具(古びて尚美しさを増すのは、職人の技と建具に刻まれた記憶や思い出がそうさせるのだろう)のなせる技だが、三和土の土間とうまくシンクロして、さらにその感覚をふくらませていた、もちろん住まい手の住み方の巧みさも見逃せない。

 そう言う意味で、古びた建具に三和土の土間をシンクロさせたことで、建具はさらに住まい手に時間を刻み、時間を味わう暮らしを定着させていたように感じられた。

換骨奪胎: 骨をとりかえ、子宮を取って使う意で、古いものに新しい工夫をこらして再生すること。