”磨く”ことを楽しむ

”磨く”と言えば、「爪を磨くか靴を磨く 」が頭に浮かぶ。

 女が”爪を磨く”時、華やかな彩りやシックを装いを爪先が演出する、細部に神は宿ると言うが、爪先まで磨かれた女は美しいという思い上がりが最高点に達する 。


  同様に、男が”靴を磨く”とき、その精神の格調は高められ、つま先から全身に至る、靴職人の長谷川裕也氏は”靴を磨くことは、己を磨き、人生を磨くこと。”だと言う。


 ここに「土」を磨く男たちがいる、彼らが取り憑かれた”磨く”世界は建築の現場だ。



 大津磨きとは、土壁の仕上げを言う、土を磨きだして、鈍く光る壁をつくる技法のこと、、数ある仕上げのなかでも、大津磨きは”左官の名人芸”と言われ、、一時途絶えていたが、その魅力が忘れがたく、15年ほど前から復活したそうだ。


職人の世界では”一から十を知っていれば、千でも万でもいく”というが、効率を重視するあまり、基本(一から十)をおろそかにする風潮があるなかで、彼らは一から十までの基本の収得に余念がない、いずれ千位にも百にもなるだろう。


彼らは、土を磨きながら、”腕を磨き、己を磨き、人生を磨いている”