塗装する二人。


 すまい手が家づくりに参加し、一体感を作り出そうという試みは結構行われている、それを謳い文句にしている作り手もある。
 僕も勧めることが多い、例えば土壁の小舞掻きや荒壁塗り、三和土の叩き、外構の竹と木の垣根などだ、一般的には参加を促す作業で多いのが、塗装工事と、内装仕上げの左官工事だろう。
 

 H邸の場合は塗装工事の一部をすまい手自ら行うことにしたが、最初から住まいを造っていく過程をすべて工務店・職人に任せるのでなく、”住まいに自分たちの手の痕跡を残したら”と誘ったわけでもない、どちらかというと、否応なしにそうなったという方が当たっている。


 塗装は、塗装職人が工事を担う場合に比べより、施主が塗装する場合は、塗布量を気にすることなく塗るので、場合によっては、というより最初は誰もがそうなのだが、刷毛からボトボトと液を落としてしまうほどたっぷりと塗る、でも回を重ねるうちに塗布量を調整できるようになるが、プロに比べ塗布量はかなり多めだ。

材料の歩留まりは悪いが、塗布量が多い分、木にとっての保護性は”ぐっと”増す。




もう一つの効用は、親近感と信頼が増すことか、端から見れば淡々と特に特別な技術が必要に見えない作業も、熟達した技があって成り立つことの一端が垣間見え、職人への信頼が増す。
一方職人たちにとっては、頻繁に現場で会うすまい手との親近感が増し、仕事に一層身が入る。


 そしてなんといっても、作業終了後のすまい手の笑顔だ、何事も成し遂げた後の満足感と充実感のこもった顔は素敵だ。
 さらに何回も作業を進めると、自分の仕事への”うんちく”が語られ始める、これも話が弾むと、住まいへの理解が深まるし、住まいへの愛情がさらに深まる。



 住宅メーカーの住宅という商品、いわゆる”住宅を買う”感覚では味はわえない、すま家を育むという感情を持つことにも繋がりやすい。
 この感情は、住まいを、世代を越えて残し、継続していく、長持ちする、本当の意味での長期優良住宅を作り出す原動力になる得ると思う。


 2枚目の写真は、ご夫婦で1階の軒のあげ裏の野地板を塗装している光景、足場に座ってヘルメット、安全帯もないのは危険ではとお叱り受けそう、少し軽率でした。