感当時節・強稽古・無情識

 「西川選手の優勝を祝う会で」、寄せ書きにしたためる予定だった言葉。
どれも世阿弥の伝書「風姿花伝」のなかで、能に対する心構えを述べたいくつか、ワールドカップで優勝した西川選手に贈る言葉として、的を得ている思えたので書き留めておいたもの。

 しかしどれも日の目を見ることは無かった、と言うのも「祝う会」に出席出来なかったためだ、出来なかったと言うより、思い違いをしたため行けなかったと言うのが正しいかもしれないが。
 悔しいので、この場でこれらの言葉の意味を述べることにする。
 感当時節は、他の二つに比べ結構わかりやすい、「処世術は世阿弥に学べ!」:土屋恵一郎によれば、心(観客)をぐっとつかむ力だそうだ、観客は役者(選手)の演技を待ち受けている、観客の心は役者にある、その心の高まりを見計うタイミングこそ重要、その時観客をぐっと引き込むことができる。
 だからタイミングとは観客(世阿弥は諸人と言っているが)の心の動きを読みとる能力そのものということになる。
 実はこの感当時節という言葉には、時の節目を読むという意味もあるらしい、どんな正しいことを言っても、タイミングを外せば説得力を持ち得えず人に受け入れられないと。
 演ずる側の選手にとって、ファーストタッチは重要、ここで観客の心をつかめれば、自分の力を十二分に披露できる。
 贈る言葉としてなかなかの言葉と思いませんか?

ちなみに、「初心忘れるべからず」という有名な言葉は、世阿弥の「花鏡」という伝書で伝えられているらしい、しかも私たちが知っている、はじめの志を忘れてはならないという意味より、もっと奥深い意味らしい。

「仕事忙しかったの?」祝う会を主催者から頂いた電話、「西川さんからのプレゼント預かってます」。 
 プレゼントって西川選手のサインのある写真とのこと、ありがとうございます。