設計者のレーゾンデートル

今、公会堂の設計をしている、この地区の 建設委員会はけっこう熱心で、最低1回/月で打合せをする、前回の打合せの内容の確認、指摘事項をどのように図面に反映させたか、問題点は無いか、新しい提案、その検討、採用か不採用か、スケジュールの確認などなどけっこうタイトな打合せが続く。
 視察も3回行ったが、今回の視察は面白かった、建設委員長が新聞の記事から見つけた、坪単価の安い、ローコストの公会堂の視察だ。
 コストで話題になるべく、この地区も建設委員会が張り切って公会堂の建設を仕切っていた、いつもの視察は区長が案内役、区長は建設の実体はあまり詳しく把握していないので、詳しい話しが聞けない場合が多いが、今回は建設委員会の三役がちゃんとお出迎えしてくれて、詳細に説明をしてくれた。
 何が興味深かったかというと、説明ののっけからのゼネコンと設計者に対する、ぬぐいきれない不信感にはびっくりした。
 ”設計屋!設計屋!”とさげすみ気味に設計者に付いて語る彼ら、何をしてそんなに設計者に対する不信感を抱かせたのか、詰まるところ発注者である建設委員会の意向を汲まず勝手に設計し、それを押しつけると言うことらしい、デザインを優先し、使い勝手を考えない、そしてそれはコストに反映し、高い買い物になってしまい、結果的に自分たちが不利益を被る。
 ゼネコンに対しては談合に対する不信感だ、入札途中からそれを感じたのではなく、最初からその疑念を持っていたらしい、だから談合をさせないためにいろいろ工夫をしていた、入札は一般的には現場説明ということを行う、これは入札参加者を一同に集め、発注者側の建設に対する思いを伝える場でもあるのだが、彼らに言わせると入札参加者が一目瞭然で談合をする環境を自ら作ってしまう、結果談合を容認し、それがコストに反映し、発注者が不利益を被るからという理論。
  
 どちらの話も否定できない、こんな疑念を抱かれないように、自分に常に”戒め”の心を持って進めたいと思った。
 設計者としては設計者のレーゾンデートルを説明することはけっこう難しいと感じた1日だった。