閉じて・開く

住まい先週の日曜日、僕が登録している住まい手と設計者のプロポーザルサイトが開催しているセミナーの講師を依頼されたので、今関心のある快適性についてお話をさせていただいた。
 セミナーの題の「  」は主催者側で考えていただきましたが、このセミナーで僕が何を考えたかというと、熟慮すべきは”快適な住まい”であり”住まいの快適性”ではないということだった。
 それでは”快適な住まい”、”住まいの快適性”の定義は如何にというと、”快適な住まい”は、住まい手のライフスタイルや人生観で千差万別、住まい手からみてどのような価値(快適性)を住まいで実現したいかと、まづ、住まい手の意志表示があって始めて快適な住まいは実現する。
 だが、”住まいの快適性”は住まいが普遍的に実現すべき指標、すなわち構造安全性、防火性能、耐久性などと共に温熱環境や遮音性など定量化できる要素をモデル化しわかりやすく表明し定めたものと定義したい。
 だから我々設計者は、どのような価値(快適性)を住まいで実現したいかという住まい手の意志を、その意志を実現することのできる技術的手法と手段を持ち得なければならない訳だが、すこし怪しい。
 セミナーでは、僕の考える快適な住まいはとは、あるいは、このような価値(快適性)を住まいで実現してみたらどうだろうかという提案と、従来の価値の再構築と再評価をしませんかと訴えたいと考えた、もちろん表題にあるような「閉じて・開く」住まいにこそが、日本という気候風土に適応した快適な住まいであるという文脈でのセミナーとしたかったのはいうまでもありませんが。
 前述した、従来の価値の再構築と再評価とは、小玉祐一郎氏神戸芸術工科大学教授の言を借りれば「日本の伝統的な民家に代表されるように、外気の変動にあわせ建物のモードを取捨選択できる住まい」を省エネルギー、健康などの視点で再評価し再構築しようというものです、もちろん従来の「夏を旨とすべし」とした牧歌的で夏の湿度に対する配慮はあるが、冬の寒さには我慢を強いるようなプライマリーな住まいそのものの再出馬ではありません。
 実は近年のハイテクノロジーは性能の予測可能性を飛躍的に高めている、いわゆるシュミレーションの技術による検証法です、この予測可能性の信頼性のupと断熱・気密の技術的なバックアップが前述の従来の価値の再構築と再評価を可能にし「閉じて・開く」住まいの実現を確かなものにしているのです。 
 ところで、「閉じて・開く」住まいの対極にある住まいとは何か、あるいは「閉じて・開く」の閉じる、開くの順序は、「開いて・閉じる」ではないかとか疑問に思う諸兄もあるかと思いますが、しかし「閉じて・開く」と「開いて・閉じる」は似て非なるものです、何故か、その点については、頭を整理してから後日に述べたいと思います。