競争原理と信頼原理と

 建築業界への信頼が揺らいでいる、ここで言う建築界とは建築士であり建築を創っていくシステムだ、そのシステムを僕は信頼原理と呼んでいる。 
 これまでの建築業界の問題といえば、欠陥住宅問題と談合だった、欠陥住宅は法律の不備、建築業者の無知・安全に対する意識の低さと住宅さえ商品だとうそぶく彼らの意識、設計施工という施工システム(第三者による施工のチェックができない)、早く安くという社会の圧力が当然のごとく帰着した結果であり、談合は公共工事が中心で、前近代的運命共同体的な村社会の互助会的な産物、いわゆる護送船団方式といわれる企業が既得権を維持していくための行為の結果といえる。
 でも今回の構造計算書偽造問題は、問題の本質が違う、欠陥住宅も談合も価格競争の争いの中で発生した問題ともいえます、価格競争は業務内容が客観化され、品質が確保された中で行われますが、今回の問題は価格競争の前提条件が問われました。
 
 私たち建築士は特に欠陥住宅に代表される問題は、公正でしかりとした品質が保証された設計図書を提供することで、価格競争の公正さ、安全性が確保され、工事現場での施工不良、無知、安全品質の軽視は、資格を持った責任ある第三者建築士)による現場監理で担保されると訴えてきた、そして指名された建築士は熱意を持って信頼に応えるはずだと訴えてきました、……そう、建築は住宅は信頼原理で品質が確保できると訴えてきました、そしてその信頼原理を担保するのが建築士制度です。
 だから、今回の問題はショックでした、私たち建築士のよって立つ基盤が揺らいだからです、建築士という資格を持ったプロが、悪意を持った偽造をするとは、この倫理観の欠如だけでは説明しきれないが、なぜ、どこでタガがはずれたのか!彼(姉歯氏)がプライドを捨てた時何が見えたのだろう、ただ、ただ無念としか言いようがない……が、この問題は彼個人の資質だと片づけられないことは確かだ。