住宅の不具合は設計に原因?

1階に2階を乗せ方によって、建物の耐震性や2階の床の不具合の発生がどんな関係にあるかを、現代木割術研究会(NPO木の建築フォーラム)の研究を参考に紹介します。

品確法で瑕疵担保以来
 住宅瑕疵保険制度を利用しようという動きが徐々に浸透しだしていますが、ある「住宅瑕疵保証機関」での事故例を対象に事故の内容を精査した結果、その因果関係に柱や壁の直下率が多いに関係していることが検証されました。
 その研究とは、昭和61年(1986年)から平成13年(2001年)度に、住宅瑕疵保険制度を利用した登録戸数668.376件の中で、保険が支払われた事例が1.011件(0.151%)あり、そのうち、構造的な理由で2階床に不陸が発生した事故例が139件(事故事例全体の13.7%)あり、その事故例を検証した結果の報告です。
 
 前述の壁の直下率とは”2階の間仕切り線のうち、1階間仕切り線に一致する割合”を言い、同じく柱の直下率とは”2階の柱のうち、1階柱に一致する割合”を言います。

 結果は、柱の直下率では事故例の平均が48%、壁の直下率では事故例の平均が54%だった、それを一般例のデータと比較すると、柱の直下率では一般例の平均が63%、壁の直下率では一般例の平均が67%と、直下率は柱では15ポイント、壁では13ポイント高く、事故例の直下率の低さが指摘できるとしている。
 では、での程度の直下率が事故を引き起こす要因となりうるかを調べると、総登録戸数のうち、木造軸組構造555,999戸に対する事故事例の割合を、柱直下率10%ごとにグラフ化した図からみると、柱直下率が高くなるにしたがって、事故の割合が低くなり、その減少傾向は直下率50〜60%を境に小さくなっていることがわかる。 
 原因別割合のグラフを見ると、設計に事故の萌芽が潜んでいる割合が高い、基本設計上に問題があると特定できるのが44%、架構設計上問題があると考えられるのが38%見られる、それに対して、施行や材料に不具合があると考えられる割合は18%とすくない、事故に至る原因が主に設計にあると思われるのが80%もある事は、設計に携わる者として考えさせられる。
 ここでいえることは、いままで欠陥住宅の大部分は工事中に起こり、施工業者の手抜き、ミス、知識不足と思っていたがこの研究結果を見る限る、その考えを改めなければならないことだ。

 しかし、物事のすべて、家族の家計から会社経営、政治に至るまで、プロダクトであれば携帯電話から自動車に至るまで、グランデデザイン、基本構想、基本設計が、プロセス全体から細部、安全性や耐久性など品質まで大きな影響を及ぼし、設計に欠陥の原因が潜んでいる時、生産の現場では設計の欠陥を修正できないことがしばしば起こる事は理解できる。
 改めて設計の重要性を認識させられた。
ともあれ、この直下率の検討は、既存の住宅の特に2階の床の不具合を見つける有効な手法だと思うが、それだけでなく、設計段階での検討も可能で、直下率の検討表は有効な耐震性の資料、例えば上下階のバランスの悪さからくる、建物の強度低下を防ぐ検討資料になりうると思う。

 詳しくは、「柱・壁の直下率と木造軸組工法の事故との関連」http://www.shimizu-arc.jp/sidemenu/center/1/shi/ziko.htmlをご覧ください。
現代木割術研究会(NPO木の建築フォーラム)http://www.forum.or.jp/はこちら