気持ちをこめた模型

passarella2007-03-24


 クライアントとの打ち合わせは、だいたい紙と鉛筆、言葉と身振り手振りがほとんど、時にはパソコンの3次元パースを駆使し、臨場感溢れる言葉と、俳優のように感情溢れる優美な所作で語りかけても、伝わらないのは伝わらない、それが住まいの設計なのだと、したり顔で納得しても、後で起こるクライアントとの行き違いは解決しない。

 屋根の形、庇の出具合、窓の位置や大きさ、敷地境界との離れ、高低差等々打ち合わせで”うんうん”とうなづいてくれて、僕の説明力も捨てたもんじゃないなと、自画自賛し、一人ほくそ笑んでも、あの”うんうん”は眠気におそわれただけかと、次回の打ち合わせ時に気づかされる場合が多い。
 スケッチやパソコンの3次元パースも設計意図をプレゼンテーションするなど、相互理解にはずいぶんと役に立つが、僕はやはり模型が一番だと思う。
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 模型を作成する意味と模型の機能は、計画の進行時期で異なる、計画の初期段階で配置を決定したり、大きさを決める手助けをするボリューム模型、プレゼンテーション用のスタデイー模型、プランがほぼ固まった段階で、それらを確認し相互理解を手助けする、質感なども表現した模型、現場で収まりを確認するモックアップと呼ばれる原寸大の模型などだが、今回の模型はもちろん相互理解の手助けとプランの再確認のための模型だ。
 模型を造っていると、紙やパソコンのモニターでは気がつかない、収まりの不具合やプランが内包する立体的な不備に気づかされる、もちろんプランで意図していたシークエンスや空間の連続性が垣間見えてニヤッとするときもある。
         

 しかし模型の一番の効用は、模型をクライアントに提示したときだろう、模型を前に、クライアントの子供に帰ったような仕草に触れるときが、模型が一番輝くときだと思う。
 Kさんご家族も、もちろん喜んでくれたことは言うまでもない。