伝統的民家の改修

passarella2007-04-12


 環境との共生・資源の循環が叫ばれて久しいが、伝統的民家こそ、その理念にばっちりの住まいといえるのではないか。
 身土不二の木・土・竹・で造られ、だからこそ住まう人には優しく健康的で、ライフサイクルCO2でも地球環境への負荷は少ない、まさしく地球に優しい住まいと言える。

今度、築80年の伝統的民家の耐震診断と・補強計画を立案することになった、耐震診断と補強を行う際の元となるのは「木造建住宅の耐震精密診断と補強方法」といいう冊子、しかし、これは在来軸組構法の住宅を念頭に置いたものなので、伝統的構法の住まいに応用するにはチト問題ありだ。

 過日、耐震診断するSさんの住まいに伺った。

 主屋は約築80年、ご主人のSさんの話では、時代に合わせ、家族構成に合わせ、南が側の縁側と水回りを、合わせて3回ほどの改修と増築を行っているらしい。
 らしいという理由は、一番初期の改修はご主人でもよくわかっていない、おばあちゃんの記憶の奥の方にかすかに残っている程度、だから当初の姿はよくわからない、調査と聞き取りで、当初の輪郭を推定するしかない。

この住まいは、昭和19年に起こった東南海地震の見舞われている、戦前のことだから、この住まいが、その時どんな被災を受けたか、おばあちゃんの記憶の中でしか判らないが、地震後、今日まで生き残って、Sさんの暮らしを支えてきた現実も見れば、耐震性もしっかりと備えていたと言うことになるのか。

 Sさんのこの住まいは、けっして贅を尽くしてはいないが、質素な造りの民家といえる、確かに、今風の住まいに慣れてしまうと、夏暑く、冬寒そうな家だ。

 痛みもひどく、特に常居の畳下地(大引きや根太や荒板)は痛みはひどい、ぶかぶかしている、ご主人に伺うと、2ヶ月ほど前の人よりの席では、床が抜けるのを心配して下地の補強を急遽したとのこと。
 しかし、床より上の部分は見た目にもしっかりしていて、指し鴨居と大黒の仕口はすこしの隙間もない、感心してみていると建てた当時の大工の意気込みが伝わってきそうな感覚に陥いるほどだ。
 大黒柱の脇にたたずんで居ると、長い間この家と共に苦楽をともにしてきた、この家族の温もりを感じずにはおれない。

 今後補強計画の中で、補強の道筋を示していくが、壊さざるを得ないかもしれない悩ましい問題も抱えていて、伝統的民家の増改築の初めての経験となるか、現時点ではハッキリしていない。
  
 最近では、有限な資源の再利用、地球への環境負荷の軽減というかけ声(住宅では、それは使用する建築資材や材料、省エネルギーのことを指す場合が多い)の元、スクラップビルドという声はさすがに影を潜めたが、住まいに限って言えば、「何となく古びて住みにくい、生活スタイルに合わなくなってしまった」という理由で、伝統的民家は壊される運命にある。

 できれば今の姿を残しながら改修できればと思いながら、帰途についた。