二枚腰・生存空間確保の構法


 最近地震がよく起こる、それもかなり大きな地震だ、地震があまり発生しないと思われていた、能登半島でも地震が起きた。

 被災された方々の復興を、心から祈念申し上げます。

 現地の被災状況を調査した金沢大学の宮島昌克教授によると、被災住宅では、土塗り壁や太い柱、梁が住人の死傷を防ぐことにつながったのではないかと指摘していた。

 同教授によると”被災住宅の特徴として、古い土塗り壁の住宅が多いことや、積雪対策で柱、梁が太いことなどが、全壊棟数の割に死傷者が少なかった理由”だと推測してた、さらに、伝統的な土塗り壁は、耐震強度が高いとはいえないはずなのに、”地震時は振動エネルギーを吸収しながら、粘り強くゆっくりと壊れ、住人に逃げる暇を与える。住宅が倒壊した場合でも太い柱、梁が屋内にすき間をつくり、避難を助けたとみている。”と述べたとあった。
 さらに興味深い事は、”…また年代や構造が似通っている住宅が、場所によって無事だったり壊れていたりしているのを被災地で目の当たりにした。「地盤の良しあしが建物の被害に与えた影響は大きそうだ」と語っている。”点だ。

 地盤については後述するとして、”古い土塗り壁の住宅が多いことや、積雪対策で柱、梁が太いことなどが、全壊棟数の割に死傷者が少なかった”という調査結果は特筆に値する。
 もちろん伝統的構法の建物は、継ぎ手・仕口は、お互いに材を刻んで接合する点で、材の断面欠損が大きくなり、接合部の耐力が低下することは明らかだ、だから金物を使う。
 しかし、最近こんな伝統的な継ぎ手・仕口で組まれた土塗り壁の建物は、軸力系やせん断力系の壁で補強された建物に比べ、確かに地震の初期剛性は低いが靭性(粘り)は大きいいので、一度にぴっしゃとつぶれない、いわゆる二枚腰で地震時に人の生存空間を
確保する骨組みだとも言われつつある。

 今度の能登半島でも地震が起きた地震による、被災調査の結果は、伝統的構法で建てられた建物の二枚腰・生存空間確保という特徴を実証する有効なデータとなるかもしれない。

□□軸力系耐力壁:筋交いど補強された壁
特徴は初期剛性は高いが靭性(粘り強さ)は低い、筋交いの木材の
品質次第で壁倍率は±0.5程度ばらつく
□せん断力系耐力壁:構造用合板で補強された壁
特徴は、剛性や耐力は合板を止める釘で決まる、初期剛性が高く、
粘りもそこそこある。

[ http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/building/news/20070403/505769/ 能登半島地震の調査 ]