地盤と地震と住まい

3月に起きた、能登半島地震の現地被災状況の調査報告について、以前このブログでも紹介させていただいた。
 調査では、次の点が報告されていた。
□土塗り壁や太い柱、梁の伝統的木造建築は、地震で倒壊しても住民の    生存空間確保という点で優れいる。
□年代や構造が似通っている住宅でも、地盤の良し悪しで、地震の被害が   大きく違っていた。
  調査した金沢大学の宮島昌克教授によると、”…また年代や構造が似通っている住宅が、場所によって無事だったり壊れていたりしているのを被災地で目の当たりにした。「地盤の良しあしが建物の被害に与えた影響は大きそうだ」と語っている。

 そんなことは、誰でも分かっていて何を今更という感覚もしないではないが、1960・70年代の都市への人口集中や核家族化で、至る所が宅地造成され、かつて人が住むことさえなかった湿地や谷底地形地でさ、宅地化され住宅が建っている。
 そんな住宅街では、日常の暮らしでの中で、地盤の事を意識することはない、でも、ひとたび地震が起これば、重大な結果を引き起こす可能性が大きい。

 地震動は震源(基盤)から地層を通じて地表面に伝わり、基盤より地表面のほうが大きく揺れる事がわっかている、これを地盤の増幅作用と言う。
 増幅作用は、一般的に地盤が柔らかいほど、または柔らかい地盤が厚いほど大きくなる、
 だから、柔らかい地盤の上に立つ建物のほうが、地震により大きく揺れて不利になる、豆腐の上に住宅が建っているようなイメージで捉えればわかりやすい。

 建物は、地震時に大きく揺れる特定の周期がある、この特定の周期を固有周期、大きく揺れ出す現象を共振と呼んでいる、日本地震学会によると、”木造住宅の固有周期は、平屋、二階建て、新しいか古いかによって変わってくるが、ほぼ0.1秒から0.5秒までの範囲に分布している。”と言っている。
 能登半島地震では、”キラーパルス”と呼ばれる地震波が注目を集めた、建物に著しく大きな影響を与える長周期のパルス状の波形で、そのすさまじい破壊力から「キラーパルス」と呼ばれる。
 一般的には在来木造住宅の固有周期は前述したように短周期だ、何のになぜ、長周期の「キラーパルス」に共振するのかは知識がないのでこれ以上述べる事はできないが、何を言いたいかというと、住まいを身を守るためには、強度だけ向上させても被害を防止できないのではないかということだ。

 在来木造のように、明治の文明開化以来の、耐力壁による建物強化、耐力壁を強くした剛性の高い設計の一点張りでは、踏ん張れるが、非弾性域の塑性域では脆く、一気に倒壊しやすい、そして生存空間確保が難しい。
 塑性域での変形性能(靭性:粘り、復元力)を高め、たとえ倒壊しても生存空間確保しやすい住まいの研究を進める時期に来ている。

 伝統的木造建築が身近にあることを忘れてはいけないと思う。

  日本地震学会