”ああ!それはですね…”はぐっと我慢

 僕らの業務・住まいの設計は、その性格上、クライアントと1対1(家族で参加される場合複数)で応対することが必然的に多くなる。
 その際いつも戒めていることがある、クライアントに単に知識を伝えることになっていないかと言うことだ。
 もちろん、最初はクライアントの夢や希望を伺うことになる、クライアントは夢や希望は、しかし、僕らからすると”つたない”言葉で表現される場合が多い、廻りくどかったり、焦点がぼけていたりする、あるいは専門誌や雑誌を示して、こんな感じという風に伝えてくる。

 ここで大事なことは、僕らがすぐに”それはこうですね!”とか”ああ!それはですね…”と口をはさみ、いわゆる目から鼻に抜けるように、こちらの専門家としての知識を披瀝することは慎まなければならない。

と言うのも、僕と、クライアントとの間に確固たる信頼感が生まれていない段階では(打ち合わせの初期段階)クライアントは夢や希望の話の中に、すこし話しにくい、これを言ったら笑われるかなといった類のしかし、全体を決定づける希望が含まれていることがあるからだ。
 そしてその類の希望は、僕(専門家)顔の表情を探りながら話すので、注意して聞かないとクライアントにとってとっても重要な事柄だと気がつかない場合が多い。
 でもクライアントの意識にいつも潜在しているので、後々意外なとき表面化し問題となる場合が多い、場合によっては後戻りできず互いの信頼感が損なわれる場合も想定される。

 ”それはこうですね!”とか”ああ!それはですね…”はぐっと我慢して、クライアントの話を徹底的に聴く、「もうすこし詳しくお話しいただけますかと」促す、特に打ち合わせ初期段階では、クライアントも専門家を前にして、つい口ごもることもあることを念頭に置き”聴く”こと、徹底的に”聴く”ことを心がけている、これがさらなる信頼感の醸成に役立ち、住まいづくりの上で大きな問題を孕まないための鉄則だ。

 ちなみに、”徹底的に「聴く」”、”「もうすこし詳しくお話しいただけますかと」促す”ことをアクテイブリスニング(積極的傾聴)といようだ。