材料選別と加工は誰が?

passarella2008-02-07


 最近、といってももうずいぶん立つが、木木材選びから、継ぎ手・仕口と呼ばれる木架構の接合部の加工が、大工の手から離れ、プレカット工場に外注された。
 昔は、大工が、木肌から木を選び、コツコツと加工していた、華やかな建前や、加工場での材の”きざみ”は、大工を大工たらしめる、大工のレーゾンデートルだった。

 さらに、大工が知恵と経験、技術の継承の中で、培われてきた、梁や桁の掛け方までプレカット工場に依存するケースが増えているようだ、もちろん、プレカット工場は、用材の刻みや、収まりのノウハウまでも蓄積してきた結果でもあるが。
 
 これは、もちろん、コストダウンを大工が強いられる結果としてだから、大工が責められるものではないだろう、彼らとて、自分の技術や経験を生かせる場面を欲しているはずだ。

 しかし、これらは、いかにも痛い、プレカット工場での継ぎ手・仕口は、蟻と鎌と枘、栓などの数種類で、その上簡略化され、機械化されているので、我々からの継ぎ手・仕口の要望(構造的な部分なので、問題あり)さえ叶えられない。
 大工の知恵と経験、技術と家づくりの根幹(木の選別、用材の加工、架構の工夫)を手放しつつある今、大工の役割の変化に留まらず、大げさに言えば、暮らしを支えてきた、伝統文化の力が失われてしまう危険性さえ孕んでいるのではないか。

 M邸は、大工の手加工とプレカットが半々だ、加工場では、屋根に掛ける3間の登り梁や化粧垂木、大黒柱、野ものの太鼓梁が刻まれている様を見ていると、こちらの気持ちさえ乗ってくる。

今回 新月伐採http://www.ts-dry.com/shingetsu/tsmoon.htmの木を使用したここでは、生産者や伐採時期など、木材の履歴が小口に記載されていて、品質の確保に努めている。