”ピシ! ピシ!”と鳴るんです。

””ピシ! ピシ!”と鳴るんです、気持ちが悪いんです、木の割れる音だと思うんですが、心配ないですよね。”
とMさん、”いつまで ピシ! ピシ!なるんでしょうか”すこし不安げに、僕の顔をのぞき込みながら聞いてきた 。

 ”大丈夫!”と言いながら、”何故、割れるんだろうう”、頭をフル回転させるながら、しばし思案………。

 ふと、”エアコンかも”と思い、Mさんに聞いてみた、”エアコンかけていますよね。”と僕、”ええかけてます。”とMさん。

 木材の割れは、エアコンをかけることによって発生したと言ってもいいと思う、エアコンをかけない最近は、割れる音はしなくなったと言っていたことからも確かだと思う。

 一般的に木材の割れは2種類ある、材面割れと内部割れだ。
材面割れは材の表面に発生する割れのことを言う、木材は乾燥により、材の表面から割れ始める、当然のことと言えば当然だが。
 材木は初期乾燥時点で、材表面は乾燥に伴い収縮しようとする、が、材内部ではまだ乾燥が進まないがために、収縮が起こらず、表面に発生する引っ張り力で、表面だけ割れてしまう、これが先の材面割れだ、でも乾燥が内部まで進むと、内部でも収縮が始まる、このタイムラグによる収縮が原因で、内部割れが起こると言われている。
内部割れは、人工乾燥特に乾燥温度が100℃を越える高温乾燥の場合、顕著に起こると言われている、そして杉材は要注意だ、しかし、板材や低い温度で乾燥した場合は、ほとんど発生しないと言う。

 M邸では小屋梁や桁、登梁は全て杉材だ、でも葉枯らしだし、受け入れ時点の含水率は平均18%だったので、内部割れの可能性はないだろう。

 では、先のエアコン原因説に沿って、材割れの原因を究明してみる。

 M邸の建前は2月、1月時点での材の含水率は概ね18%、竣工は7月だから、7・8月時点での材の含水率は、その気候下に影響され一定の含水率(平衡含水率という)になるから、静岡・7月では17%になる。

 8月のM邸、エアコンを稼働させる前と後の室温と相対湿度を(A点)30℃・80%と(B点)25℃・65%と仮定すると、材の含水率と収縮の変化は、木材の平衡含水率線図より約12%になる。

*1
平衡含水率が17%から12%に変化すると、材の含水率は5%下がったことになる。
含水率が5%変化したときの杉材の収縮率は、上表より含水率1%当たり0.26%だから
      0.26×5=1.3%となる
よって材成180mmとして杉材の収縮は=180×1.3=2.34mmになる。
 エアコンをかけると、杉材は2.3mm縮む、その時に発生する表面引っ張り応力で材が割れ”ピシ”という音が鳴ったんだと推測できる。

M邸の場合、真壁で登梁等は化粧のため、エアコンの影響は直に受ける、されに気密性も向上し手いるので、室内の平衡含水率も低下しているという、M邸のように竣工が梅雨明けだと、”ピシ”は避けられないのかと思うがどうだろう。 

*1:「木材の人工乾燥」寺沢・筒本