薄氷?

文明は豊かな森林がインキュベーターとなり、育む、しかし森林の荒廃は強烈なしっぺ返しを伴い、森林資源の枯渇は文明の衰退を促す、と解き明かしたのは環境考古学者である安田喜憲氏。
古代インデア文明しかり、メソポタミア文明しかり、イースター島しかりだ。

 文明の渦中にある人々にとって、今を享受することには異論はないだろう、よって、森林を略奪して資源を枯渇させる行為をくい止めることは困難で、例え、その社会が民主主義的意志決定のシステムをもっていたとしても、世代間にまたがる利害を超えた、合理的な判断(地球の資源を今の世代で枯渇させない、生産活動の負の産物をコントロールできない)を下せないから、結局、文明は滅びるんだと、安田氏は言う。



 環境倫理学的でいえば、近代化とは、結局、共時的な意志決定システムの獲得であり、それは、現世代の未来世代に対する犯罪(資源の略奪)を制御する機能を失うことである。

 文明の発生以前の社会は、伝統の支配という形をとる、自然の恵みに感謝し、来年もさらに次の年も、豊かな恵みを願う。
 世代を越えて、実りを確保すること、生産形態を反復可能な状態に維持することが意志決定のメカニズムとなる、しかし、これは人口が定常の状況で最適なのであって、生産性が向上し、人口が増加する状態では対処できない、すなわち、通時的システムは意味をなさなくなり、共時的システムに移行すると論じたのは、環境倫理学者の加藤尚武氏だ。


 
 これらの論に従えば、世界的には、森林破壊に待ったがかからない今、人類の生存に重大な危機を与えるかもしれない地球温暖化の問題は、本当は薄氷を歩むがごとくの状態なのかも。