「サルと人と森」
今を予知していた石川啄木、そんな思いを強くする絵本が出版された。
「サルと人と森」と題する絵本は、石川啄木のエッセイ「一握りの砂」の中に収められている「林中の譚」を今の言葉で優しく置き換えた絵本。
今から102年前、啄木は、今の混濁する地球を予知するかのように「林中の譚」で、人の傲慢さと思慮のなさが、文明のゆりかごである森にダメージを与え、人間が謳歌する文明は、人を怠惰の道に追いやる悪魔の手だと看破していた。
古代文明の比較研究をされている、安田喜憲元京都大学大学院理学研究科教授は人類文明には、「森の民」の植物文明と、「家畜の民」の動物文明のに二類型があると言いい、その「森の民」たる日本は、森にこだわる限り、日本の未来は安泰と著書・森の環境国家の構築で述べている。
その説に従えば、今の日本は安泰と言うわけにはいかない、「森の民」たる日本人は、残念にも、日本を日本たらしめる、その根元たる森にダメージを与え続けてきた。
そして、「林中の譚」で、森の住人(サル)は言う
”…噫、人間は憐れむべきかな、汝等はすでに過去を忘れたり。過去を忘れたるものには、将来に対する信仰あることなし、憐れなる人間よ、滅亡の時、早晩汝等の上に来たらむ。”
猿のつぶやきを、深くかみしめたい。