照明が似合わない空間。
設計を進めていく上でいつも最後に悩むのが照明の選定、雑誌などを見ても、せっかくの空間が目障りな照明で台無しになった写真をしばし目にする。
現代の日本人は、夜を明るくしたい欲求が強いように思う、室内は必要以上に照らされて健康的、隅々まで明るく照らされた室内は、落ち着く場所も無いと感じるのは僕だけか。
谷崎潤一郎は「陰翳礼賛」で暗がりの中に美を求める東洋人の性向を”美は物体にあるのではなく、物体と物体とのつくりだす陰翳のあや、明暗にあると考える。”と女性美を例に述べていた。
さらに、”健康的な空間では「風雅」「花鳥風月」とは縁が切れ手しまい、漱石先生の生理的快感を得にくい”とも書いている。
実際、光と影は空間構成の重要なエレメントだと思うが、昼光がつくりだす陰影と伴に、照明が作用しつくりだす闇も、気持ちを落ち着か、魅力的な夜を演出できる要素といえるのではないか。
西方の家では、ことさら和風を狙ってはいないが、照明は空間を決める重要な要素であることは変わりなく、光源が直接見えない間接照明を多用して、空間の質を減じることのないよう工夫した。