エネルギーの地産地消の可能性(2) 薪ボイラー 

 木材は国によってA材、B材、C材と品質と利用形態でランクされている、主に曲がりなどの形状からA材は製材、B材は集成材や合板C材はチップとしてボードや製紙などで利用しよう考えられている。
これは木の根元から梢まで全ての素材を用途に合わせて 利用できる環境を整備したいという思惑からこんな等級をつけている。

 木にとっては迷惑な話なのかもしれないが、実際山では切り捨て間伐で随分の材が捨て置かれている、林地残材というやつでほとんど未利用だ、製材工場にも製材した後の残材が処理しきれないほどある、しかし全てC材というわけでもないところが問題。

 

 薪ボイラーの燃料はこの残材あるいはC材の活用を促進させる可能性がある、しかし忘れてならないのは木材の利用範囲をUPさせることが前提、あくまでも製材した残り部分であり、林地で玉切りした残りの梢などの材ということで、いわゆるバイオマスありきではない。

 もう一つの視点は資源循環だ、地元の残材(C材)を家庭の薪ボイラーに供給するネットワークができればエネルギーの地産地消が進む。
 もっと面白いのは、燃焼後できる灰の活用、農業との連携だ。
 例えば焼畑農業では、焼き払った後の灰がきっと作物の収穫になくてはならないもの、とすれば薪ボイラーの灰も農家で有効利用できるかもしれない、そうなれば本来の資源循環に近づく。

  

エネルギーの地産地消の可能性(1) 薪ボイラー

地産地消と言えば“食“に思い当たるが、住の地産地消はエネルギーだろう。
住宅でのエネルギーの地産地消は、まず手始めにエネルギー源(エネルギーの種類)を分散しなければならない、また地産地消ではエネルギーを熱で取り出すのが手っ取り早やく、取り組みやすい。

住宅のエネルギー消費量の割合をみると一次エネルギー換算で家電が約34%、給湯23%、暖房13%で以下照明、冷房、換気、調理の順だ。
給湯と暖房は熱エネルギーを使うので、取り組みやすく、取り組みやすいと言うことは分散しやすいエネルギー源といえる。

これまで、暖房には薪ストーブ、給湯には太陽熱利用給湯システムがその代表格だったが、更なるエネルギーの地産地省、資源循環という点で薪ボイラーには常に関心があった。

 今回、愛知県、岐阜県で視察した薪ストーブは、熱交換の考えを逆転させた優れもので、熱交換用の温水を薪を燃焼させて作り、その高温水に給湯用、床暖房用の熱媒管を通す方法を採用している、日本酒好きには堪えられない熱燗を作る方法とまったく同じ。 
 この薪ボイラーの設計思想はシステムや構造を単純にすること、開発者が何度も言っていたが、システムや構造が単純だから理解でき安心感を生む。

また、エネルギーのカスケード(多段階)利用を組み込んでいる点も注目。
本来のエネルギーのカスケード利用とは厳密に言えば違うかもしれないが、低位(低温)のエネルギーは床暖房に使い、高位(高温)は給湯に使う。
 
 熱交換用の温水は、夜寝る前に1,2本の薪を投入すれば朝方でもなお50度前後の温度を保っている、これにより、床暖房の供給範囲にもよるが、朝から快適な温熱環境を確保できそうだ。
一般的に給湯と調理は同じエネルギーを使うが、この場合給湯は薪ボイラー、調理はガスないし電気となる、このことは利便性やメンテ、コストの点でマイナスと捉えがちなので、この点を払拭する提案が普及の鍵となるだろう。

節電とPPS

 今日から二十四節句の大雪、この時期の季語に冬籠がある、冬の楽しみの一つは、寒さを避けて家にこもり過ごす、炬燵とミカンは冬の風物だ。
 その時期に”冬の節電スタート”とはせっかくの楽しみをに水を差す無粋な宣言に素直にうなずけない。
 というのも、夏の節電に際し東電がPPSが供給する電力送電を断ったようだ、東電は送電を閉ざしてまで、電力供給より電力危機を演出し、地域独占既得権益を守りたいのかと唖然としてしまう。
アインシュタインの言葉を思い出す「ある事故を起こしたのと同じマインドセットで問題を解決できない」。

 電力自由化に呼応して名乗りを上げたPPSが新価を問われ、電力分散のまたとないチャンスなのにその活躍する場を閉ざされて…”箪笥の肥やし”とはまさにこのこと。

 
 今回改めって知ったが電力会社の地域独占の弊害を是正するために、1995年電力自由化の極めて小さな歩みが始まり、2000年に独占10社以外にPPS:特定規模電気事業者が電力の小売りができる法改正がなされ、現在47社が登録されている。
 PPSが小売りできる電力は特定規模の需要に限られるが、2000年時点で総販売量の26%にあたり、2007年時点でのPPSのシェアは中部電力区域で0.5%、最大は東電区域で4.9%となっている。

 また、全国オンブズマン連絡協議会の調査で、自冶体では宮崎県がPPSからの購入率52.5%で全国一、続いて横浜市で47.9%、逆に全国55の自冶体が0回答だった。
 静岡県は資料がないので不明だが0といわれても納得してしまう。

”冬の節電”に際し、PPSに送電網を解放することが喫緊の対応だ。

 住処(スミカ)と御在処(ミアラカ)


「時ノ寿 Standard 木組の家」は二つのプロトタイプを用意した、住処(スミカ)と御在処(ミアラカ)だ。
住処(スミカ)は30坪タイプで田の字型プラン、御在処(ミアラカ)は40坪タイプ、どちらも恒久的な上屋と家族構成で変化しやすい水回りを納めた下屋で構成するベーシックな民家型プラン。 

■住処(スミカ)30坪タイプ

 「住」という字は古くは「逗」と書いた、その意味は「物事のとどまって動かない様」『漢字語源字典』を示し、「処」は場所の意味でそれらを揃えて住処となる。

 スミという言葉は「住み」と言うことの他に「澄み」という意味もある、例えば記紀には”八俣の大蛇を退治して櫛名田姫を得た須佐之男命は、須賀の地に至ったとき、「ここに来て我が心はスガスガしくなった」と言って、そこに住まいを造ることにした。”という逸話が残されているが、この逸話に限らず、”スガスガしい場所”であることが住居の備えるべき条件として語られる。
スガは住処(スガ)と共に澄処(スガ)であった。

 ”つまり、スムという行為は、たんにトドマル、あるいは居住するという物理的な行為以上に、地域の構造、風土、社会などと関連した文化というものが存在する”『上田篤:空間の原型 筑摩書房
 
■御在処(ミアラカ) 40坪タイプ

 古事記の出雲の国譲りで大国主神は”…出雲国の多芸志の小浜に、天の御舎(ミアラカ)を造りて…”ここではミアラカは宮殿のことを指すと言う。
 一方日本書紀ではミアラカのことを「天日隅宮」とある、日(ヒ)は霊、隅は住みの意味で霊が住む宮の意味だ。
少しオドロドドロしい感じがするが、ここで言いたいのは、ミアラカと社会的風土との関わりだ、前の住処(スミカ)で述べたように住まいはその地域、風土、社会から離れて存在しえない。
 霊が住むという意味を強引に関連づけるとすれば、「時ノ寿 Standard 木組の家」の住まいでは、土間が暮らしの中心を占める提案をしているが、この土間は三和土で仕上げる、三和土は地元の赤土、砂利、石灰に苦塩を混ぜ合わせ叩くが、苦塩は土を叩き固める共に、住まいを祓い清める意味がある。

 未だ手が届きませんが、大工と左官でつくる住まいを目指している。

「時ノ寿 Standard 木組の家」の標準仕様


長期優良住宅にも対応できます。

「グリーンウオッシュ」

”震災後の住宅のエネルギー需要・2011年度のオール電化住宅の市場規模を、震災前の予測の58.4万戸から8.3万戸減の50.1万戸へと下方修正。”  未だ、オール電化住宅の希望が50.1万戸もあるの?、この期に及んでまだオール電化を選択するのか。


「グリーンウオッシュ」という造語を聞いた覚えもあると思います、森林や自然を背景にした広告宣伝等で商品やサービスが環境に配慮しているかのように見せかけて、あたかもその企業が環境に配慮しているという誤解を消費者に与える意味で問題視され、その行為を「グリーンウオッシュ」と呼んだ。

 オール電化は、省エネ住宅のグリーンウオッシュだとも言える、あたかも環境に優しいと装う姿がそれだ、オール電化にすれば確かに光熱費はお安なるが(使用状況で変わる)消費量が減るわけでないので環境負荷は減少しない。
 光熱費が安いことが、環境負荷が小さいと誤解を与える点でまさにグリーンウオッシュ。

 電気エネルギーを得るには、発電所で熱エネルギーを発生させて蒸気を作り、発電機を回転させて運動エネルギーに変換し、これを電気エネルギーに変換する、さらに、発電所から送電線で消費地に送られるが、送電ロスが加わって、最高38%程度しか元の一次エネルギーを利用出来ない、僕らが電気エネルギー1を得るためには発電所で一次エネルギーを2.71投入することになる。

 また家庭で電気エネルギーを暖房器具、温水器やIHで使う場合、電気エネルギーを熱エネルギーに戻さなければならない。
 エネルギーは、変換するたびに、無駄な熱が空気中に放出される。

 熱エネルギーを効果的に取り出す方法は木(薪ストーブ)、石炭、ガスの直接加熱と太陽光の放射熱(太陽光発電ではない)利用。
 電気エネルギーを必要とするものは照明、モーターを使う洗濯機など。

暮らしのエネルギーは分散することを基本としよう。

クライテリア

 昨年に続き今年も木造スクールを行うことができた、希望を叶えてくれた西部支部に深く感謝。
今年の狙いは、もちろん軸組・架構の理解を深めるこで昨年と変わりはない。


 第一回目は木構造、今年も山辺先生にお願いした、今年は演習を中心とした講義で、横架材の算定・断面を計算で導き出すことを目標にした。
 この架構・軸組を構成する横架材の算定・断面を計算で導き出すことは、建物に作用する力の種類と流れを理解することと同様に架構・軸組計画上、非常に重要なこと。


 一般的に架構・軸組計画はプランの変化と共に変わる、プランが決まってから架構・軸組計画を着手することはなく、プランと架構・軸組計画は表裏一体で……いや、架構・軸組計画が常に半歩先んじることで、構造合理性を獲得でき、経済的で、力強く、美しい架構・軸組が実現できるのだと思う。

 このとき横架材の算定・断面も押さえておかないといけないが、手計算で押さえておけば…計算する場合、荷重条件やスパン、負担範囲、余裕度などが解っているので…確かな手応えを持って対応でき、いわゆるスパン表から得られ情報量とは格段の差と信頼性が得られる。

 ここで初めて山辺先生が口を酸っぱくして言う、設計者として自分自身の*1)クライテリアを持つことができる。

講義中この「クライテリア」と「手を動かせ」は重要なキーワードで何度となく、繰り返し述べていた。


クライテリアとは設計基準のことで、ここでは個人の設計者が持つべき設計上の基準、法律と安全性、コスト、表現の間で揺れ動く。

 TPP・農業は林業のように関税ゼロにされてズタズタに?

日曜日の朝日TV、TPPに関する討論で”かつて林業は、安い外材に押され、国内生産量が落ち込み疲弊した…”と某経済評論家と某民主党議員、”だから農業も林業の轍を踏むなと。”


 林業を引き合いに出し、”関税ゼロで輸入される安い外材に押されて、国産材が売れなくなった”はミスリードといえる。
 確かに外材の方が安い時も一時期あったようだが、今日の林業界取り巻く厳しい環境は外材のせいではなく、林業界の体質によるところが大きい。
 戦後、住宅事情から木材需要が高まる中、林業界は残念ながら、満足な品質(乾燥、寸法、仕上げ)と量を提供できなかった、そのため、徐々に高い外材(適正なと言ってもいい)にシェアを奪われていった、驚くことに、乾燥が木材の強度に影響を及ぼすことさえ理解していなかったとも言われる。

  
 だからTPの本質が解らなくなる、関税の撤廃だけに目を奪われてはいけない、食品・医療・金融・労働・調達などの障壁の撤廃が主戦場だ、医療で言えば国民皆保険、地域医療は崩壊するかも、僕の分野で言えば政府調達、小規模公共施設の森林資源活用・木造化も風前の灯火?
 農水省や農協の利権にメスを入れる良い機会だと思うが、このまま拙速に進めることは将来に禍根を残す、しかしどうやら1994年(ボゴール宣言)以来問題を先送りしてきたツケを払わされていることも確かなようだ。